第3限「遠泳の心」

先日、ふと昔のアルバムをのぞいてみた。

何気なくみた写真がすべて、追憶の引き金となって、時間はみるみる過ぎていく。

何も成し遂げていない、無駄でも愛おしい時間だ。

写真の中に、遠泳行事のものがあった。

海の中を1km泳ぎ切る過酷なものだ。

その行事で、僕はリタイアを選択した過去がある。

写真の中の彼ら彼女らは皆、僕よりも頑張っていた。

必死に海に食らいつき、海水を肌にまとわりつかせながら、ひたすら泳いでいる皆。

その一方で、最後まで立ち向かえず、茫然とコンクリートを歩く自分。

罪悪感からか、皆に支給されたぜんざいを受け取らなかった。

そんな懐かしき消化不良を想起しながら、そっとページを閉じた。

僕たちのバンドは、結成してはや4年。遅すぎるくらいのスピード感で進んできた。

周りのバンドが燦然と駆け抜けていくなか、あまりにも緩い。

けれども、僕たちなりに漸進してきたことは確かだ。

色々と出演してきたライブ。その中で出会ってきたバンドマンたち。

ふとストーリーズを見ると、誰かが脱退していることも多かった。

また一人、また一人といなくなっていくあのときの影は、振り返る間もなく白地の「お知らせ」に消えていく。

一体今どんな活動をしているのだろう。

思いばかり巡らせることもあった。

駆け抜けることは、時に自分を苦しめる。

それは、息継ぎもなく泳ぎ続けるからかもしれない。

僕たちは、息継ぎをしながら進んでいきたい。

そうすれば、どこまでも遠泳できるはずだ。

アルバムの自分に胸を張って誇れるように、続けていこう。